第5章 猫は鴉へ爪を突き刺す
「……本音と建て前どっちが聞きたいですか?」
「「「「えっ?」」」」
私の言葉に、皆は短く素っ頓狂な声を上げる。
恐らく、予想だにしない問いと私の様子に彼らは戸惑っているようだ。返答が無いので、再度同じ言葉を繰り返す。
「本音と建て前、どっちが聞きたいですか?」
「え、えーっと…」
日向は左右に視線を配る。どうやら先輩達に意見を伺いたいらしい。先輩達も、連鎖するかのように他の皆に視線を渡していく。
自分の表情は分からないが、どうやら皆は私の表情から芳しい答えではないのでは恐れているようだ。すると、不意に影山さんはボソッと呟いた。
「俺は、本音」
「おれも…」
日向もそれに続いて意見を述べる。それを皮切りに皆も本音と口にする。やはりみんな、嘘なんか聞きたくないだろうからそう言うと思っていた。
しかし私の様子がいつもと違うことから、皆一様にしてその表情が固い。
「……そうですね」
考えるような素振りを見せ、ほんの少し間を置く。
眼前でそわそわと言葉を待つ彼らを一瞥し、平坦な声で答える。
「──────超カッコ良かったです」