第5章 猫は鴉へ爪を突き刺す
* * *
「「集合────ッ!!」」
主将と黒尾さんが声を上げる。各チームメンバー達はその声の元へと駆けて行く。音駒の皆は烏野指導者組のお二人の前に、烏野の皆は私も居る音駒の指導者お二人の前へと立つ。突然の事に肩がビクッと震える。
うお何々何事じゃ。皆の視線がちらほらと私に向けられ気まずい。額に汗を滲ませながら斜め下を見詰める事に専念する。
あ、あれか。他校の指導者の方達から意見を貰うっていう時間。何か懐かしいぜ。今凄い私空気だけど。
「「お願いしアス!!」」
「「「「しアース!!」」」」
揃った挨拶が響くと、皆の真剣な瞳が猫又監督と直井コーチに向けられる。私はそろりとほんのちょっと距離を置く。ホントにちょっとだからあんま意味無い。
気休め程度にでも良いから離れたかったんデスヨ。だって場違い感が否めないんデスヨ。厳かな雰囲気の中、猫又監督の落ち着いた声が響く。
「───正直、予想以上の実力だった。とくに攻撃。9番と10番の速攻。止められる奴はそうそう出て来ないだろう。レフト二人のパワーも強力な武器だと思う」
その言葉に、どこか皆嬉しそうな雰囲気がある。実は私も嬉しいですよい。
「あとは、いかに攻撃(そこ)に繋ぐのか、だな」
「「「「ハイッ!!」」」」
皆は厳粛にその言葉を受け止め、ピンとした返事をした。
「とはいえ、とにかく君等はチームとして荒削りだし練習不足。でも、圧倒的潜在能力(ポテンシャル)。練習次第で相当強くなるだろう。─────全国大会で会おう」
皆の瞳に強い光が宿るのを感じた。やっぱり、烏野の皆は強い。誰が何と言おうと、私は皆を強いと感じる。
「あざス!!」
「「「「あざ────ス!!!」」」」
主将に続いて皆挨拶と礼をする。そんな皆を、猫又監督と直井コーチは温かく見詰める。
そして私も。これからも皆を支え続けたい。
改めて そう、強く思った。