第5章 猫は鴉へ爪を突き刺す
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ボールがふわりと宙を舞う。東峰先輩の大柄な身体が床を蹴って飛び、スパイクを打った。
再び試合が始まったが、序盤から日向はミスを繰り返してしまっていた。現在日向はリベロと交代中だが、真剣な眼差しをコートへと
向けている。やっぱり、凄い。
「烏野の10番、ミスばっかだったが。答えを見つけたんじゃないのかい?」
猫又監督は静かな声音で問い掛けてきた。その顔の唇は軽く釣り上がっている。しかし、その笑みは優越を含んだものではなく、私が口にする答えを見定めるかの様な笑みに感じた。
私は瞼を降ろすと、再び目を開く。自分自身にも宣言するかのように言葉を口にする。
「答えは、きっと出ています。ただ、それが上手くいっていないだけです。私は、信じています。もう一度決めてくれると」
「……それで良い。信じなさい」
猫又監督は、先程とは違う穏やかな表情を浮かべてそう言った。
私はその表情に軽く驚くが、次には監督に向かって力強く、はいと返事をする。猫又監督は何も言わないが、ただ柔和な笑顔を見せて頷いてくれた。
私は信じてる、日向と影山さんを。必ずもう一度決めてくれると、
信じている。