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【ハイキュー!!】行け!烏野高校排球部

第5章 猫は鴉へ爪を突き刺す


           *    *    *

気付けば私は呆然としていた。
今目の前で見た事は全て空想のように思えた。あの二人が組んだ速攻を止められる人が現れる等考えたことすらなかった。冷たい汗が額から滲んで滑り落ちた。

でも、これはまぐれなのかもしれない。心の片隅でそんな可能性が芽生えた。しかし、その可能性もあっさり捻り潰された。犬岡さんは、最初に止めたのを皮切りにもう一度二人の速攻を止めていた。


まぐれじゃ、ない。


でも、私はその考えをどうしても捨てたくないのだ。ジャージの裾を強く握り締めて試合を見詰める。不安で震える手を、鎮めるように。
影山さんがトスを上げる体勢を取る。日向はそれを見逃さず、はやぶさのようにネット際と移動する。続いて犬岡さんもブロックする為ネットへと近付く。すると、跳躍した日向は、犬岡さんのブロックから逃れるかのように犬岡さんの前から逸れた位置へと飛んだ。
これなら止められな、



────バチッ!!



鋭く肉を弾く音が響く。私は目を見開いた。
日向の放ったボールは、犬岡さんの手により弾き返され、烏野側のコートへと落下していた。私の唇はわなわなと震え始める。やっぱり、犬岡さんは、


「まぐれなんかじゃあないさ」
「ッ!」


バッと隣に顔を向ける。そこには、パイプに椅子に深く腰掛け、猫じみた瞳をコートへ向けている猫又監督がいる。
「犬岡は、幾度も10番の速攻を目の当たりにして慣れて来たんだ。加えてアイツはすばっしっこい。それも一つの要因さね」
「…」
私は再びコートへ視線を戻す。烏野側のコートに立つ日向は、汗を滴らせ、肩は荒々しく上下している。その顔は地面へと向いていて、表情は全く分からない。
「日向…」
「心配なのかい?あの10番が」
猫又監督の瞳が向けられる。私は瞳を返すが、すぐに地面に視線を落とし、口を噤む。

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