第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
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私が違和感に気付き始めたのは、試合が始まってから随分と経過してからだった。
「ナイスフェイント月島ー!」
月島さんがフェイントを成功させ、点を決めた時。
私は初めて孤爪さんの表情に目が行った。その時の孤爪さんは無表情でじっと月島さんを見詰めていた。何も変な事ではないだろうと、私も自己完結に努めようとした。孤爪さんはあまり表情の変化がある人ではない。それは私も理解している事だ。
それにも関わらず、何故か異様に胸騒ぎのような物が沸き始める。違うのだ、何かが。表情がどうというより、
瞳。そう、瞳だ。
孤爪さんの瞳が怖いのだ。まるで人間味がない、猫の瞳に似ている。何か意味を孕んでいるように、じっと見詰める猫の瞳に。
まるで、そう。
──────観察するかのように。
ぞわりと寒気が全身を駆け抜けた。答えに辿り着いた瞬間、一気に恐怖が襲いかかって来た。それと同時に、私の視線は孤爪さんに縫い止められてしまう。怖い、でも気になってしまう。彼の視線は、一体何を意味しているのか。
その後も、烏野は点を重ねていく。そして、孤爪さんの視線の動向に少し傾向がある事に気付いた。
孤爪さんの視線は主に、日向、影山さん、月島さんを追っているということだ。その三人に何か共通点があるかと考えたが、答えは分からない。でも、何か必ず意味を持っている筈だ。