第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
「あ、あの…」
「はっ、はいっ!!なななな何でしょうかッ!!」
「や、山本、猛虎さん、で良いんですよね?」
「へっ、あハイ!!に、2年!ウィングスパイカーでありますッ!!」
「改めてですけど、烏野1年、瀬戸伊鶴です。よろしくお願いします」
「あ、あ、あスッ!!!よシャスッッ!!!」
山本さんは敬礼し、私に一礼する。何だか忙しない人だけど、見かけよりもとても優しそうな人だ。私も礼を返し元に直ると、不意にポンと私の左肩に手が乗る感覚を覚えた。その方を見ると、黒尾さんが悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「やんじゃん瀬戸」
「? どういう意味ですか?」
「お前から切り出したのは正解だった。山本のやつ、見かけに寄らず女子に奥手なんだよ。だからお前から切り出してくれたおかげでアイツもちゃんと…ってわけじゃないが、アイツなりに上手く喋れた方だと思う。ありがとな」
私は再び前へ顔を戻す。山本さんは犬岡さんと黒髪の人と喜びを分かち合っている。
大したことはしていないのだが、そんなに喜ばれると嬉しくなってしまう。
と、不意に山本さんが動きを止める。次にはゆっくりとこちらへ顔を向けると、赤い顔でたどたどしく私に聞いた。
「あ、あの、何で…俺の名前知ってたんスか……?」
「あ、それは、」
答えようと口を動かそうとした瞬間、黒尾さんがスパンと言い切ってしまう。
「そりゃ俺らがお前の名前呼びまくってたからだろーが」
「あ・・・・」
黒尾さん、そうなんだけど、もうちょっとなんか、うん…。山本さんは何処か冷めた表情で固まってしまう。
まるでお母さんに『サンタさんは居ないんだよ』って伝えられたかのような表情になってる。
山本さん、恨むならどうか私の左隣のこの人をどうぞ。