第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
「もー早く勇気出ちゃってくださいよー。猛虎さん自己紹介しないと先に進めないじゃないですかー」
(お前先に言えば良いじゃねぇかっ!!)
「学年順なのにそんなことしたら瀬戸ちゃん混乱しちゃうじゃないですか!」
「そーですよ猛虎さん!据え膳食わぬは男の恥って言うじゃないですか!!」
「それ意味違うからな犬岡」
「えっ!?」
うん、全然意味違いますよ犬岡さん。今そんなアダルトな局面じゃないですよ。私思わず全力でツッコミそうになったじゃないですか。ナイスフォロー夜久さん。
「おーい。いい加減にしろよー山本ー。さもないとこれからお前だけ練習量増やすぞー」
「ですって猛虎さん」
「だそうですよ猛虎さん」
(うっ、ううう……)
黒尾さんの鬼畜発言と、ハーゲンダッツコンビの合いの手により観念したのか、犬岡さんの肩からひょこっとモヒカンだけが覗いた。どうやら背を縮めて隠れていたようだ。
「ほらっ!猛虎さん!!」
「わっ、うわわわッ!!」
ポンと犬岡さんに背を押され、山本さんの身体が列から押し出され、私に目の前まで接近する形となった。
犬岡さんは『もう!これくらいしないと!』という具合にぷんすこと頬を膨らませる。何だこの可愛い人。
「わ、あ!!す、すんません!!」
「あ、いえ全然っ!謝らなくても…」
「で、でも」
山本さんは赤面しており、耳火事まで起こしている。それに釣られて私も顔が熱くなる。ああもうお見合いかよもう。
「…」
「…」
気恥ずかしさからお互い黙り込んでしまう。目の前の山本さんは至っては顔が真っ赤に染まり、目を激しく泳がせている。
どうやら山本さんも異性に対しての免疫がからっきし無いようだ。お互い苦労しますな、と勝手に同士のように感じてしまう。
相手と似ているならこそ助け合いの精神というもの。私から話しかけてみようではないか。