第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
「彼女、お借りしますよ」
偽の笑顔は消え去り、正体を現す。最大の愉悦と優越感を詰め込んだ笑みをそこに浮かんだ。
奴は有無を言わさず瀬戸の手首を掴んで連れて行く。その瞬間、奴は俺の方を一瞬見やる。その瞳はまるで俺を値踏みするかの様だ。俺は静かに嫌悪を剥き出しにして見詰め返す。そうすると奴はニマリと笑い、顔を背けた。日向や田中さん達は諦め切れず、そいつの背中に声を浴びせ続ける。そんな東峰さんは日向達を必死に宥めている。
キャプテンや菅原さんは、静かに奴の背を見詰めているが、その瞳には畏怖する程強い対抗心が煮え滾っている。でも、二人の気持ちは痛い程理解出来る。
俺も、知ってる。
前方に目を向けると、瀬戸が不安気な表情で振り返っていた。不意に瀬戸と視線が交わる。俺は、視線が絡んだ事で、改めて奴に瀬戸が奪われたのだと焼き付けられた。歯を強く噛み締め、怒りを堪える。
瀬戸を─────絶対に奴になんて譲らない。