第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
「伊鶴ちゃん、大丈夫?」
「はい…さっきはありがとうございました…」
「私は何も。急がないといけないのは事実だし、伊鶴ちゃん怯えてたのは明らかだったし。助けないわけにいかないよ」
潔子先輩は真っ直ぐな瞳で言い切った。冷静で落ち着いた潔子先輩の表情と言葉が、今は何よりも私を安心させてくれる。
「影山、伊鶴ちゃんが怯えてるのに気付いてなかったのかな。影山は周りがよく見えるタイプだから、気付かないわけないと思うのに。
さっきは怒ってるみたいだったから、そのせいか…。」
潔子先輩は顎に手を当てながら考え込む。
私の事を気にしてくれてるのは知っていたが、黒尾さんと少し喋ってただけであんなに怒るとは夢にも思わなかった。まだ心臓が恐怖で早鐘を打っている。凄く怖くて仕方なかった。
「先輩、どうしたら…顔合わせないわけにいかないのに」
「大丈夫だよ。私もサポートするし、喧嘩したわけじゃないんだから、心配しないで」
「はい……」
潔子先輩に優しく背中を擦られ、幾分か落ち着く。多大な不安を抱えながら体育館へと向かった。
不安を握り潰す様に、強く拳を握り締めた。