第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
そういえばそんな気が。次第に私の背筋が縮こまって行く。怖くて目を合わせられない。隣に立つ日向も冷や汗かきまくってるし。潔子先輩も気を遣ってか遠巻に見詰め、その瞳は不安を湛えている。
「で、何で音駒の主将と知り合いなんだ?」
「え、と…」
影山さんの持っているクーラーボックスが怖くなってきた。何故かそれで殴られそうで怖過ぎる。
「日向を探している時に、音駒のセッターの方を見かけたんです。で、音駒の主将さんに人を尋ねられまして。どうも彼は、その方を探しているらしかったので、そこまで案内して……ということがあったくらいです」
「ふーん……少しの間の割りには長く話してたな」
「そ、それは探すのを手伝ったお礼を言ってくれて、」
「音駒の主将随分と楽しそうだったけど、何話してたんだ?」
「え、それは、えっと……」
会話が進むに連れて影山さんの声が重みを増していく。その声の重みと比例して表情からも不愉快さが滲み出ている。
その表情に恐怖で口が縫い止められたように上手く動かない。唇の隙間から漏れ出すのは、「あ、う、」と何の意味も持たない単語だけだ。どうしよう、どうしよう。
「みんな、そろそろ行かないと」
突如出された助け舟は潔子先輩からだった。すかさず日向もそれに便乗する。
「そ、そうだよ!急ごうぜ!な?!」
「………分かった」
影山さんは不服そうに眉根の皺を深めるが、日向に引き摺られるように先に進んで行った。二人の姿がなくなると、ストンと強張っていた肩が緩んだ。