第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
「あ。そーいや烏野って瀬戸以外にマネ居んのか?黒髪眼鏡の美人さん居るケド」
「はい、そうですよ。3年生の先輩です」
私の答えに黒尾さんは顎に手を当て、うーむと呟き考え込んでしまった。ていうか誰でも潔子先輩を『美人』って表現するんだな。潔子先輩は万人が認める美人だということが証明されつつある。
「んーよし分かった。ありがとな!」
「…? どういたしまして」
問いの意図は掴めないが、黒尾さんの中で何か解決したようなので納得しとこう。
「伊鶴ちゃーん!行こー!」
「あ、はーい!今行きまーす!」
我らが潔子先輩からのお呼びが掛かったのですぐに行かねば。再び黒尾さんに向き直り挨拶をする。
「黒尾さんすみません。これで失礼します」
「おー。んじゃなー」
黒尾さんは笑みを浮かべてヒラヒラと手を振ってくれた。私は会釈をすると、球技場の階段付近で待ってくれている潔子先輩の元へと駆けて行く。
「潔子先輩、すみませんお待たせしました!」
「ううん、全然大丈夫だよ。でも……」
潔子先輩の瞳が黒尾さんへと動いた。黒尾さんはひょこひょこと軽快な足取りで球技場の中へと入って行った。何か不思議な雰囲気の人だ。
「伊鶴ちゃん、音駒の主将さんと知り合いだったの?」
「あ、んー知り合いって程じゃないですよ。日向を探しに行った時に偶然会っただけです」
「そっか、それなら良いけど……」
「? どうかしたんですか?」
「何かあの人危なそう。気をつけてね?伊鶴ちゃん」
潔子先輩は珍しく嫌悪感を露わにしている。想定外の事態に慌ててしまう。
「ど、どうしたんですか潔子先輩。何で急に危なそうなんて、」
「だ、だって!」
「だって…?」
「伊鶴ちゃんが悪い人に狙われたらって、心配で……」
可愛過ぎかこの人女神だろ。あ、最初っから女神だったわ。