第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
彼は口元を抑えている右手を一旦除ける。その口元はだらしなく緩み切っており、にまにまと笑みを浮かべていた。右手が再び口元へ運ばれた。
人差し指をピンと立て“しぃー”と唇が動いた。何となくその仕草にボンと心臓が撥ねる。
「えーっと日向に瀬戸、もう大丈夫か……?」
「「す、すみませんっ!!」」
主将が困惑した笑顔を浮かべて問い掛けた。私達は慌てて謝罪をして、挨拶を促した。
「挨拶!お願いしアスッッ!!」
「「「「しア────スッッ!!!」」」」
低音の綺麗な挨拶が響いた。思い切り出鼻を挫かせてしまって申し訳なけかった。でもこれはビックリですよホント。こんな事ってあるもんなんだなと半ば感動してしまう。
「瀬戸おれちょっと行って来る!!」
「あ、うん?い、行ってらっしゃい…?」
何処へ行くのかと日向を視線で追うと、金髪の彼、な、名前…確か、孤爪研磨という名前の彼を追いかけて行った。さすが日向。迷わず追いかけるか。
日向のスキルに恐れおののいていると、不意に視界の端にふらりと大きな影が現れる。
「どもーこんちはー」
「ッ!!」