第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
でもどんな時でも影山さんと競いたいんだな日向。そういう相手が出来てからの日向は本当に生き生きし始めている。影山さんもきっと同じだろう。そんな二人を見詰め、また胸中がざわめいた。もう随分と前に仕舞い込んだ感覚が煩わしく騒ぐ。
もう良い。もう今更だし、あんな気持ちを味わうのは二度とゴメンだ。すっこんでいてくれ。
そう言い聞かせてざわめきをある程度落ち着かせる。安堵が胸を満たし、息をゆっくりと吐いた。
「あ、そっか。番号までは覚えてないか」
「テレビで一回見たきりだもんな」
「え??」
主将とスガ先輩の言葉に日向は疑問符を浮かべる。私も分からず、主将とスガ先輩の悪戯っぽい笑顔を見詰める。
「“小さな巨人”が全国出た時の番号、10だったぞ」
私は主将の言葉に目を見開いた。日向も驚いて再び自身のユニフォームの番号を見る。そしてユニフォームを掴む両腕を伸ばし、瞳を輝かせて見詰める。その表情は眩い太陽の様に映る。
「瀬戸っ、これっ、“小さな巨人”が着てたって、これっ、どーしよっ!」
「ひ、日向落ち着いて。嬉しいのは凄い伝わってくるけど…」
「喋りたいことをまとめてから喋れよな」
影山さんが呆れたようにツッコむ。しかし嬉しさの所為か、日向は突っかかる事なく鳥養コーチの方を向く。
「こっ、コーチの粋な計らいですかっ!?」
「いやたまたま」
たまたまなんかーい。
思わず心中でツッコミを入れてしまった。私完全に粋な計らいかと思った。いやこれはマジカッコいいサプライズだなとか思ってたのに。
「じゃあ運命だっ!!」
「たまたまだろ」
「妬むなよ影山クン」
「なんで俺が妬むんだよっ!!」
コラそこコントしなーい。微笑ましい光景に頬が綻びそうなのを堪えながら見詰める。仲良き事は美しきかなって言葉作った人天才だろ。