第1章 瞳の先
私はふわふわした気持ちのまま、二人の顔を交互に見る。二人はニッと無邪気な笑顔をくれる。何か言わないとと口を開いても、喉の奥が絞められたように言葉は出てこない。心臓も痛いくらい鼓動を打って苦しさを覚える。頭のどこか片隅で、あ、本当に嬉しい時は声って出ないんだと知った。
「瀬戸、もっと肩の力を抜け。うちの部はみんな仲良いし、良い奴らばっかだ!」
「むしろ仲良すぎてうるさいくらいだよ」
主将の言葉に続いて菅原先輩はニシシと笑って言葉を紡ぐ。二人のやり取りだけでも、この部の仲の良さが窺えた。二人の楽しそうな会話が何だか可愛くて、くすぐったい気持ちになった。
─────私もこんな風に、みんなと、仲良く出来たら良いな。
「あのっ!」
「「?」」
「そ、その、私は、妙に考え過ぎてしまったり、喋ったりするのが、得意な方ではない、ので、しばらくぎこちないままだと思い、ます。でも、皆さんと仲良くしていきたいです」
「うん!瀬戸のペースで、俺達に心を開いてくれれば良いんだべ!」
菅原先輩は嬉しそうに言葉を返してくれた。また胸が温かくなる。先輩のおかげで後一言が言えそうだ。
「そ、それで、いきなりなんですけどっ・・・!」
「ん?」
緊張で震える両手を自分で強く握る事で抑える。顔が熱くなるが逸らさずに菅原先輩を見る。