第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
「えっ、あ、ああいやっ、すみませんっ!何でもないですっ、ホントにすみませんっ!」
「そ、そう、ですか……」
何突然妙な事言ってんだ自分。男性の目が一瞬で変人を見るような目になったじゃねぇか。何気無い世間話に突然意味不明の言葉返されたらこんな顔になるわ。どうすんだこの空気。早くあの場所を目指そう。ていうかそうしないと過呼吸発動しそう。
と、まるで私に救いの手が差し伸べられたかの様に、あの男の子がいた場所が見えてきた。
「あ、あそこです。あの人ですよね?」
「おー、そうですそうですありがとうございます。……ん?」
「あ、日向!」
目先には、あの時見掛けた人と、橙色の温かい髪色の姿が映っていた。あの姿は間違いなく日向だ。
「研磨!」
男性が強めの声色で呼びかけた。金髪の彼と日向はその声に反応して顔を上げた。
「あっ、クロだ」
「! 瀬戸!!」
「日向っ、探したよ」
私は小走りで日向に駆け寄る。それと擦れ違いの様に、研磨と呼ばれた彼は男性の元へとテクテク歩いて行く。
「それじゃ、どうもありがとうございました」
「あ、いえ。どういたしまして」
男性は私に会釈をすると、歩き出そうとした。不意に金髪の彼が振り返り、小さく片手を上げた。
「じゃあ────”またね”翔陽」
そう言うと、彼は前へ向き直った。そして男性は私を見ると、僅かに口角を釣り上げた。……気がする。歩き出した彼らは、勝手にフラフラすんな。ごめん、と微笑ましい会話をしながら去って行った。
「”またね”、って言ったよな?」
「うん…また、って、どういうことだろ……」