第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
「完全に不注意でした。本当にすみません」
「! い、え。こちらこそ、すみませんでした」
男性が謝罪を口にする瞬間、彼の瞼がゆっくり開いた。その瞼の中に仕舞われていた眼球には、猫の様な瞳孔が収まっていた。
男性の瞳を見た瞬間、額から汗が噴き出た。
まるで私を値踏みしているかの様な感覚を覚えさせられる。すぐにこの場から離れたい。本能がそう伝心してくる。
「あ、あの本当にすみませんでした。それじゃ、」
「あー待ってください、聞きたい事が」
「は、はい。何でしょうか…」
彼から顔を背けた瞬間声をかけられ、肩が跳ねる。待て私。いくら何でも初対面の人だぞ、怖がりすぎだぞ。はい、深呼吸。
「ここら辺でー金髪、っていうか、プリン頭のやつ見ませんでしたか?」
「プリン頭、ですか」
その単語を聞いた瞬間、フェンスブロックに座っていた彼を思い出した。そして次に、男性の手にしている赤いジャージが目に入った。恐らく、彼と同じ学校の生徒なのだろう。
「私、あっちの方で見ました」
「ホントですか!良ければ、案内してくれませんか?」
「あ、は、はい…」
流れのまにまに男性と行動を共にすることになってしまった。隣を歩く彼を横目でちらりと見やる。
かなり慎重高いな。ざっと見ても180以上はあるぞこれ。無表情で黙々と歩く彼。どんな事を考えているのか皆目見当も付かない。
「どうか、しましたか?」
「へ、あぁいえっ、何でも……」