第4章 猫と鴉は再び兵刃を交える
「悪い瀬戸、お前にも手伝ってもらって…」
「いえ、気にしないでください。私はあっちの方を探して来ます」
「ああ、頼んだ!」
スガ先輩と会話を交わし終えると、私とスガ先輩は、互いに真反対の方へと走っていく。早く日向見つかると良いな。
* * *
只管足を動かし続ける。視界の端で景色が流れていく。
足に疲労感も募り始めた。嘗ては曲がりなりにもバレー部だったので体力に自信はあったのだが、さすがに今は厳しいようだ。
「日向、一体どこに、」
視線の先に光るものが見えた。遠目にも分かる派手な風貌の少年がそこに居た。
フェンスブロックに腰を降ろし、赤いジャージを纏った彼は、手にしているスマートフォンを弄っている。何より特に目を引いているのは、太陽の光に輝く金髪だ。
しかし、根元は茶色なので所謂”プリン頭”というやつなのだろうか。ここら辺では見かけないな。派手な容姿なので見掛けたら忘れる筈がないし。
「っと、日向探さないと…」
私はポツリと呟くと、急いでその場から立ち去った。
───────……
「もう、日向どこにいったの、わっ!!」
「うわっ、と」
角に差し掛かった瞬間、突然の衝撃に体勢が崩れる。どうやら誰かにぶつかったらしく、相手の人が私の手を掴んで支えてくれた。
「あ、す、すみませんっ」
「あーいえ、こちらこそすみません」
顔上げると背の高い男性が立っていた。
艶やかな黒髪が鶏冠の様に立っている。垂れ下がっている前髪に右目が見え隠れしているのが印象に残った。
そして、彼の顔を装飾する貼り付けた様な笑顔に何故か背筋が強張った。