第10章 起床
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涼太は私をおぶったまま色々話をしていた。
涼太の手には、さっきの傘と、カバンがかけられていて、その背中に私が乗っている。
空はまだどんより曇っていたけれど、所々に白い光が入ってきて、それが水たまりで反射してキラキラ輝いていた。
「そろそろつくっスよ。」
そろそろつくらしい。
静かな公園だけの住宅街が一転、交通量の多い街に変わる。
周りの目が痛い。
離してくれないか、と軽くオーラを出すが、気付いてるのか気づいてないのか…
一向に離してくれる気配はない。
私は諦めてため息をつくと涼太にいった。
「降ろして…。」
「…え、恥ずかしいンスか?」
「…。」
「そんな怖い顔しないで!
分かったから。降ろすっスよ。
っちと話したい事あるしね。」
そうして涼太はゆっくり私を降ろした。
涼太は私の少し前を歩いて、私は少し後ろを歩いた。
たまに涼太は振り返って私を見て、また前を向いて歩いた。
五分くらいたっただろうか?
美しく立派な校舎がそびえ立つ。
…海常高校。
私立のこの高校は誠凛よりも大きい。
涼太は迷わずに人混みの中をスイスイ進んでいく。
その最中、女子の歓声と衝撃により私は涼太を見失った。
まぁいいんだ。
帰ろうか。
私が身を翻した
その瞬間、
私の中の誰かが問いかける。
「何処に?
病院から逃げて、
家から逃げて、
学校から逃げて、
懐かしい友達から逃げて、
君の事を1番考えてくれる人から逃げて…
キミは一体何処に帰るの?」
私は…
何処に
帰るの?