第10章 起床
side
「…?」
私に降り注いでいた水が止まった。
辺りではまだ雨の音がしてる。
不思議に思って顔を上げるとそこには……
「涼太…。」
「久しぶりっスね。
っち。」
そこには自分が濡れていても気にせず傘を私に向けてくれてる…
黄瀬涼太がいた。
「風邪、ひくっスよ。」
濡れた髪、体、カバンを気にせずに私にそう言う涼太。
「もう会えないかと思ったっス。」
「…。」
私はひたすらぽかんと口を開けていた。
「一先ず…このままだったらどっちも風邪、ひいちゃうしね。
っちが何でこんな所にいるのか、とか。
どこの高校なのか?とか。
いろいろ聞きたいことあるし、
まあ、俺の学校、行こ?」
涼太はそう言うと私の手を優しく掴んだ。
まるで壊れ物を扱うみたいに丁寧に…優しく。
「…。」
「行きたくないんスか?」
「…。」
「ちょっとごめんね。」
そう言うと涼太の顔が見えなくなって、その代わりに大きな背中が見えた。
傘が落ちて、水の音が響き渡る。
「ちょっと濡れちゃうかもしれないけど…
行くっスよ。」
私からは涼太の顔は見えなかった。
私は返事の代わりに涼太の首に手を回した。
雨は大分止んでいて、
少し光が溢れ始めていた。