第24章 星屑の泪
翠「…アタシをどうする気?」
翠は、強気になって
幸宏に言葉をかける。
同じように見えない地平線を
眺めていた幸宏は、
首だけをこちらに動かして、
「もちろん、連れ戻すつもりです」
と、笑顔で答えた。
予想通りだ、
というように翠はため息をつく。
翠は首を振った。
翠「やだ、アタシ、帰らないから。
もう、あんなところになんて
絶対に戻りたくない」
潮風が吹き始めていた。
夏だというのに、肌が寒々しかった。
真っ黒な風景をバックに、
幸宏の、まるでランプの炎のような
大きな瞳が光っている。
幸「貴女様は絶対に戻らなければならない。
それが、産まれた貴女様の
運命なのだから」
翠「運命なんて関係ないよ?
それに、…あの子たちと
離れたくはないから」
幸宏は
「わがままなお姫様だ」
と微笑みながら
ポケットに手を入れる。
そして、取り出したものを
翠に見せつけた。
そのものを見て、
一瞬にして翠の表情が強張る。
幸宏は、その反応を
噛み締めるように「ふふ」と笑った。
幸「そういうと思って、
貴女様の大切なご友人たちに
楽にしてあげられる薬を
手渡しておきました」