第24章 星屑の泪
翠「…アタシに何の用?」
昨日と変わらない岩場の影で、
翠は男に問いかけた。
その、男は、
にやり、と薄ら笑いを浮かべ、
口元に手をやった。
「別に…」
男は目を伏せる。
「掟をやぶった貴女様を
たまたま見つけてしまっただけですよ?」
翠「…たまたまじゃないよね。
幸宏」
翠は、竜の目をして
男――幸宏を睨みつけた。
名前を呼ばれた幸宏は、
きょとん、とした表情を。
やがて、また気味の悪い薄ら笑いを
浮かべて目を三日月のように細めた。
幸「まさか…、
本名で呼んでもらえるなんて。
随分と、私は貴女様の
瞳に映ってしまったのですね、ふふ」
翠「最初、名前が同じだけだと
思ったけど、違ったみたい。
まあ、気づかない方が幸せだったかしら」
そう呟いた翠は、
真っ黒な海に目を移した。
―――また、地平線がわからない。