第24章 星屑の泪
その様子を横目で
見ていた翠が立ち上がる。
そして、優一を見下して言った。
翠「アタシまた珈琲入れるけど、
優一もおかわりいる?」
優一は顔を上げて、翠を見た。
そしてにこっと無邪気に笑うと、
カップを差し出して頷いた。
そのカップを受け取り
笑顔を返す翠は、まるで母親。
親子を見ているようだった。
翠「あ、優一。
もっと苦いのにする?」
優「ああ…そうしてくれ。
早く起きてかまだ眠い…」
翠「馬鹿でしょ貴方。
カフェインは、飲んでから
三十分後に効くんだからね?
…まあいいか。待っててね」
優「うん、…」
私はふたりを交互に見つめた後、
そっと頷いた。
訂正しよう。
親子ではなく、夫婦だ。
今の会話は夫婦の会話だった。
休日の夫は、仕事疲れで
珈琲を飲みながらニュースを見る。
妻はそんな夫の願いを
スムーズに叶えるようにしているのだ。
沙「なんか、素敵だなぁ」
つい、そんなことを呟いてしまった。
隣の優一が「なにが?」と言う。
返事に戸惑った私は、
何でもない、と首を横に振った。