第24章 星屑の泪
照れくさい気持ちが残り、
私は窓をそっと閉めた。
頬に感じていた
涼しい風の感触も消え、
翠のいるキッチンの方へ足を進めた。
四つの白いコーヒーカップが
並べられ、翠が珈琲をそっと
入れているところだった。
隣にきた私に気づき、
翠は手を止めて顔を上げる。
翠「珈琲、ちょっと苦いかも」
沙「目覚めの一杯には丁度いいですよ」
翠は「そうかな」と呟くと、
口角を上げて笑う。
規則正しい真っ直ぐな
ポニーテールの髪が、
翠の動きによって波打たれていた。
彼女は目線をずらすと、
作業を再開し、珈琲を入れ始める。
少し苦味のある匂いが鼻を通った。
「よし、できた」
翠が満足そうに呟き、
コーヒーカップに手を掛ける。
「味はいかがかしらねぇ」
そっと口に持っていくと、
熱そうに眉を寄せながら一口を啜った。
すると途端に
コーヒーカップを口から離し、
私の顔を見て舌を出した。
見るからに嫌そうな顔をしている。
沙「失敗しちゃいました?」
翠「うん、苦すぎるわこれ。沙織、
悪いんだけどそこの棚から
砂糖取ってくれる?」
翠はカップを置くなり、
キッチンの奥に並んでいる
レトロモダンな茶色棚を指さした。
私は頷いて翠の横を通る。
棚を開けると、
すぐ『sugar』と描かれた
調味料入れの容器が目に入った。