第23章 さあ!海へ!!
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皆がそれぞれの部屋で寝静まった頃。
真っ暗な海であるのに、
天上の星たちは懸命に輝いている。
白のパーカーを身にまとい、
翠はそっと、岩場に腰を下ろしていた。
もう海の音しか響かない。
彼女はすぅ…と
吸い込まれるようにその音を
楽しんでいたのだ。
その時だった。
「これはこれは…息抜きですか?」
彼女はすぐに
声のする方へ振り向く。
そこにいたのは、
ゆらっと灯るランプをもった
幸宏 だった。
その正体が幸宏とわかり、
彼女は安堵する。
幸宏は翠の正面の岩に
そっと腰を下ろすと、
ももの上にランプを置いた。
幸「ここの海は、夜も綺麗でしょう」
彼女は頷く。
幸「翠さんは、お昼とは
違い夜は静かでいたい人なのですね」
翠「…いや、別にそんなんじゃ…」
言いかけたところで、
彼女は口をギュッと結んだ。
その姿に、幸宏は
静かに微笑む。
幸「何か先程のお友達に
言えないことがあるのでしょう」
幸宏の言葉に、
彼女は首を横に振った。
すると、幸宏は
困ったような笑みを浮かべて
立ち上がり、
「話せるといいですね、いつか」
と背を向けた。
彼は歩き出す。
その時、彼の後ろで
岩とズボンが擦れる音がした。
振り返ると、
彼女が佇んでいる。
翠「どうしてアタシの名前を知ってる」
幸「・・・」
幸宏は、
微笑みを浮かべて
また歩を進めていった。
やがて、彼の持つランプの
火は消えていった。
翠は、そのランプを
ずっと、見えなくなるまで見届けていた。