第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
栞「今回のこともそうだよ。
君を救うためには
犠牲をださなければいけない。
沙織ちゃんにとっては
それも苦痛なのかもしれないけれど
そういう選択をしなきゃ、
君も、誰も救えないんだ。
悪があって、正義があって、
そうやって、この世は廻ってる。
それはもう、うっとおしい程にね?
だから、沙織ちゃんが
全て悪いなんて、絶対に思わないで。
それは、また君を苦しめる原因になる。
君の選択は正しかったんだよ。
何も間違えてはいなかった。
正しくないはずないじゃないか。
こうやって、僕らの不安も
消えたんだ。」
沙「…会長さんたちの?」
栞「うん、僕らは
君を助けることができて
本当に心の底から嬉しいんだ。
それが、何人もの犠牲を出してでも。
だって、大切な仲間でしょう?
見過ごせるわけないじゃん?」
大切な、仲間。
そのセリフ、
何度聞いても涙が溢れてくる。
ずっと、小さい頃から
欲しかった 言葉 。
何度も傷ついて、やっと、
みんながくれた大切な言葉。
ああ、私、なんでこんな
不安を抱いてたんだろう。
それは、私の為に
犠牲を出すなんて嫌だった。
だけど、きっと、
この選択で良かったんだ。
栞「あの子たちを
汚れた色に染めない為に、
君は今日頑張ったんだから。」
…頑張れたのかな、私。
瞳の奥が熱くなって、
じわぁっと、涙がこみ上げてくる。
私は、その涙を
隠そうと目を擦った。
なのに、次から次へと
まるで切って出たように…
涙が、止まらなかった。
刈「沙織、」
沙「!っ…刈真くん…」
気がつくと、刈真が
私の目の前にいた。
すっ、と、その白い手が
伸びてきて、私の涙を拭う。
沙「…っ」
刈「…本当に、良かったっ」
刈真は、
そう言った次の瞬間に
私をギュッと抱きしめた。