第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
栞鳳は店の花壇に腰をかけ、
翠は柱に寄りかかっていた。
息抜きをしてこい、と
言われたのだが、
私は先程までのことが
頭を離れずにいるので、
全く喋りだす勇気がなかった。
お互いがお互いを見合う。
最初にこの沈黙を
破ってくれたのは、栞鳳だった。
変わらないにこにこ顔で、
「あ~」と背伸びをする。
栞「終わったね、バイト戦記。」
次に喋りだしたのは、刈真。
刈「バイト戦記ってなんですか」
栞「え~?何かそんな感じの
修羅場じゃなかった?」
刈「ふざけではないんですからね」
二人の会話に
次第に気持ちが軽くなる。
翠に目を向けると、
彼女も私を見つめていた。
にこっと、微笑んでくれる。
翠「いやぁ~、
本当に緊張しちゃったなぁ」
栞「あ、吹雪姫、
あの登場めっちゃカッコヨカッタよ!」
翠「本当!?
でしょでしょ?
なんかこうっ、ヒーローみたいでしょ!」
刈「…今何歳だと思ってるんですか」
翠「なんだとぉーっ!?」
私は3人を見つめて、安心した。
ああ、いつもの光景だ。
我慢できずに
笑声を漏らすと、
3人も笑い返してくれた。