第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
よく締まったその口が歪み、
口惜しそうな表情に変わる。
だがその顔はすぐに
つんと冷たい顔になった。
実「…ここの誰が
沙織ちゃんのことを信じるの?
私の方がバイトの経験で
皆と頑張ってきの。
その信頼があんたには
『言い訳』にしか聞こえないって訳?」
沙「そ、それは…っ!」
実「あんたの方が
突然やってきて信じてくれって
言ってるもんよ。
そっちの方が店長だけでなく
ここの皆を困らせてるんじゃない?」
実咲は
その凛とした眉を上げて、
乾いたような笑い声をあげた。
確かに私は店の人達とは
あまり親しくない。
仕事で大したことも出来なかったし、
いつも連に頼ってろくに
手順も覚えられなかった。
こんな役に立たない私を
まわりの皆は良いように
思ってくれていたのだろうか。
…迷惑になってはいなかっただろうか。
実咲の笑い声がずっと
耳の奥にこびりついたまま、
離れようとしなかった。
沙「…っ」
なんて返したらいいか分からない。
その言葉も、自分の
言い訳になってしまうと思った。
段々恥ずかしくなってきて、
返事をあやふやにしたまま
顔を伏せてしまった。