第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
部屋で刈真達が
わんさかとやっている頃。
私は、なんとなく緊張していた。
もうすぐ夏だというのに、
涼しく突き刺さってくる風は
あまり心地よいものではなかった。
我が家の屋根の上で、ふぅと溜息をつく。
沙「…。明日…なんていえばいいのかな。」
「君の思っていることをいえばいいのさ。」
暗闇から聞こえた声に、
ビクッと肩が上がってしまった。
悠々と笑顔で姿を現したのは、
今日一日、指揮をとってくれた栞鳳だった。
栞「あれれ、浮かない顔をしてるね。」
沙「会長さん…。」
私の顔をみた栞鳳は、
なんとなく、影がかかった目をして
隣に腰を下ろした。
栞「やっぱり、沙織ちゃんには
″仕返し″って難しかったかな。」
天上の星が、
とても寂しく映る。
沙「ごめんなさい…。せっかく、
私のために作戦をたててくれたのに…。
あのお二人を前にしたら
急に怖くなってしまって。」
私は、申し訳ない気持ちで
栞鳳に顔を向けた。
すると、栞鳳は
気にすることはない、と微笑みかけてくれた。
栞「今までにされたことを思えば、
怖くなるのは当たり前だよ。
それに、沙織ちゃんは
本当に心が綺麗だから…」
栞鳳の言葉が切れているのに
はっとした私は、目を開いた。
栞鳳は、まるで
手の届かないものを漠然と
欲しがっているような、甘い、
うっとりとした笑みを浮かべていた。
沙「会長さんっ!!?」
栞「っ!、ああ…
ごめんごめん、いやぁ~
あまりにも沙織ちゃんが
真っ白で可愛いからさぁ。
…驚かせてごめんね。」
ソっといつもの笑顔に
戻った栞鳳は、ゆっくりと立ち上がった。