第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
栞「ハイ! お疲れさ~ん!!」
パチパチと拍手をしながら
栞鳳は物陰から姿を現す。
翠「ふーっ 疲れたぁ~」
真っ白な美しい女=翠は
ぐっと背伸びをする。
優「腹へって死にそう…」
血だらけの男=優一は
本当に死にそうな顔で
食べ物を求めてきた。
すぐさま刈真が側にあった
コッペパンを手渡す。
刈「如月さん、大丈夫ですか?」
優「し、死ぬぅ…」
コッペパンをもらった優一は
すぐさまガブッとかぶりついた。
まだ表面がサラサラしていて
口に含んだときのあのとろりと
溶けていく食感に、優一は
目を輝かせて喜んだ。
栞「いやーっ
ほんっとに君らは面白いね~♪」
翠「まあ、演技には自信あるし!」
刈「如月さんが『腹へった』と
言ったとき、少しヒヤッとしましたけど…」
栞「まぁ、成功したからいいんじゃなーい?」
ニヤケ顔で栞鳳は
その場に座り込んで気絶している
奈菜美を見下ろしながら言った。
その場の皆も
自然と目線が奈菜美に移る。
翠「本当にこの子達は許せない…っ」
優「嶋瀬…こいつのこと、
本当に好きになったのかぁ?」
いつの間にかコッペパンを
平らげていた優一が、
刈真に顔を向けて呟いた。
刈「そうではありませんよ、
僕には沙織がいますから。」
刈真は、
当然でしょう、と言わんばかりの
笑顔をみせた。