第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
嫌なものを見るように
顔をしかめて、奈菜美は女を見た。
『 あっち で あそ びまし ょ 』
その言葉に身の毛が
よだったのは気のせいか。
奈「っ!? いたっ!!」
ガリッと鋭い痛みに
気づき、すぐに手を見つめる。
なんと女は
奈菜美の手の甲に爪をたてていた。
奈「やっやめて!!
離してぇ!!!!!」
バシッッッと
勢いよく手を振り払う。
それに続いて、ようやく
力が戻ってきた足を力み、
ダッ!と女から逃げ出した。
引っかかれた左手が
じんじんと奥の方で痛む。
すると今度は
何か大きなものにぶつかった。
奈「!…?」
その大きなものは
ゆっくりと振り向いてくる。
顔を見た瞬間、
奈菜美は悲鳴をあげた。
奈「きゃあああああああああ!!!!!」
『 … 腹へった… 』
大きなものの正体は
顔を血だらけにした男だった。
目も開いているのかわからない。
とにかく、『腹がへった』と
言う言葉に、もしかしたら食べられるっと
恐怖を感じた奈菜美は
一目散に走り出した。
奈「ほんっとにどうなってんのぉおお!!!」
自分は確か、
刈真君の家に
お邪魔しただげのはずだ。
なのになぜこんなことになっている?
なぜ一向に刈真君はこないのだ?
まさか…
自分は異世界にでも放り込まれた?
色々な妄想が
頭をぐるぐると回り、
気がつくとまた壁にぶつかっていた。
奈「ぶっっ!!!!」