第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
壁に鼻筋をつけたまま、
呼吸を無理矢理にでも整える。
だが、まるで
水中にいるときのように
うまく息が吸えない。
焦りだけが鼓動を早くし、
ゆっくりと汗が頬を落ちる。
『 お嬢 さ ん あそ びま しょ 』
『 …うらめしやー…』
後ろから聞こえてくる恐ろしい声に
何もできずに体が震えた。
その時。
刈「奈菜美さんっ」
奈「!!!! 刈真君っっ!!」
暗闇から聞こえた彼の声。
助かったと奈菜美は
後ろを振り返った。
すると。
奈「かっかるまくん…っ」
何事かという顔をした刈真が
心配した様子で奈菜美を眺めていた。
刈「大丈夫ですか?」
震える体が感じたその美しい声は
奈菜美の鼓動を落ち着かせてくれた。
途端に力が抜け、
ズルっと壁に持たれながら座り込む。
奈「怖かった…っ」
刈「ごめんなさい、奈菜美さん…」
奈「でもっ刈真君がいるからもう大丈夫!」
刈「…。」
奈菜美が大丈夫と言った時、
刈真の顔が朗らかになった。