第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
グッと
こみ上げてくる後悔。
沙「…っ」
どうにもできなくて
また涙が流れてしまう。
刈真は
温かいその手で
冷たい私の手を覆った。
刈「辛いなら辛いって
言っていいんだよっ?
無理して…
君自身を傷つけないでっ」
沙「…ぅ…っ」
私は
刈真が一番嫌いな行動をした。
ひとりで戦う ということを。
沙「だって…っ強くなって…
刈真君に…迷惑かけたくなくてっ」
喉元が苦しい。
小さな嗚咽を漏らしながら
また私は泣き出した。
刈「君は強くなろうとしなくていい。」
沙「…えっ?」
刈「強さは 我慢することじゃない。
大切な仲間たちと
一緒に 答え を見つけていくこと。
それが 君に必要な強さなんだよ。」
刈真が
落ち着いた様子で
私の頭を撫でる。
その温かすぎるぬくもりが
体の芯まで届いた時、
私は、気持ちが軽くなった。
沙「…ごめんなさぃ…っ」
刈「沙織が謝ることは何もないよ。」
沙「…ありが…っとっぅ…」
刈「気が済むまで泣けばいい。
僕はずっと側にいるから。」
沙「うっうわああああんっ」
冷え切った
二人だけの空間で
私は大粒の涙を
流しながら叫んだ。
もっと…無理をしている
自分をわかってあげれば良かったんだ。
刈「沙織には…沢山の仲間がいる。」
沙「…?」
刈「ひとりで悩むんじゃなくて
仲間一人ひとりに頼って。
一人ひとりを 信じてあげて。」
沙「…っ…うん…うんっ」
刈真は
また私をそっと抱きしめる。
優しい香りがして
私は安心することができた。
刈「でも」
不意に 刈真の声が響いた。
刈「まだ 終わってないよ。」
沙「…?」
彼は にっと笑った。
刈「 僕が あの子達を
野放しにしておく訳ないでしょう?」
銀色の瞳が 怪しく輝いた。