第22章 ✝バイト戦記✝Ⅲ
『沙織…おいで…』
『待って! お兄ちゃんっ』
…?
聞こえてきた懐かしい声に
私は目を開けた。
すると、
そこは 満開の花畑で。
ああ… 走馬灯かな…。
まだフワフワと
した意識のなかで
花畑を走り回る小さな子供が見えた。
「あ…。」
ふと、その子供たちの
顔が見えたとき、自分と兄だと理解する。
兄である神は
はしゃぐ私の手を
しっかりと掴んでくれている。
幼い頃の私は
まだ とても幸せを噛み締めていた。
『危ない…。座ろう…』
『お兄ちゃんお兄ちゃんっ!
お花がたくさんあるよっ!!!
たくさん摘んでね?
お母さんとね?
お父さんにね?
あげようよ!あげようよ!!』
グッと神の
服の袖を引っ張っている自分。
我ながら
もう少し冷静な子ならば良かった。
神は
そんな私にでも
優しい笑顔で接してくれた。
『沙織…頭…』
『?なになにぃ?』
不意に神が
自分を呼ぶ。
おとなしく頭を出すと
彼は私の頭に華冠をかぶせてくれた。
「…。」
『ありがとうお兄ちゃんっ!
沙織可愛い??
お兄ちゃん大好きだよっ!!』
『暴れちゃ…ダメ…。』
とても和やかな
光景に 気持ちが温かくなった。
が。