第21章 ✝バイト戦記✝Ⅱ
沙「あれ…?そういえば奈菜美さんは…」
実「ほらブス。」
沙「!っ」
実咲が、先程とは
比べ様にもならないくらい
低い声で私に言う。
実「とっとと運ぶから早くしろよ。」
沙「は、はいっ」
私は、
サンドイッチとジュースを
急いで実咲に渡した。
実「もっとマシなバイトじゃねーのかよ。」
沙「す、すいません…。」
実咲は、
チッと舌打ちをして
客席へと料理を運んでいった。
私は、
胸に干潮のような険悪が沸き起こる。
憂鬱で気持ち悪くて
溺れそうな程苦しく波が打ち寄せてきた。
(耐えないと…。)
私は、本日何度目かも
わからないほどの溜息をついた。
その時。
ズカズカと私の前に
一人の男性が歩いてきた。
さっき入ってきた
三十代くらいの男だ。
私はなんだか嫌な予感がした。
沙「どうしま―――
「てめぇふざけんじゃねぇぞっ!!!」
(え?ええ!??)
私は何が起きたのか分からなかった。
沙「ど、どうなさいましたかっ――
「ジュースの中に虫が入ってんだよっ!!」
私は驚いて客が持ってきた
ジュースに目を落とす。
すると、本当に虫が入っていた。
沙「うそ…っ」
私は頭が真っ白になる。
奈菜美は私を陥れるためにジュースを…?
沙「もっ申し訳ございませんっっ!!」
「ごめんじゃ警察はいらねーんだよっ!!
どうしてくれんだよっ!?
俺もう二口も飲んじゃったじゃねーかよ!!」
(ど、どうしてこんな時に限って…っ!)
「おいっこれ作った奴お前なんだろっ!?
これ運んできた店員が言ってたんだよっ!!」
沙「えっ!?」
私は息が詰まった。