第21章 ✝バイト戦記✝Ⅱ
私はカウンターの前に
立ち、客が来るのを待った。
カランッ
沙「!いらっしゃいませ!」
綺麗なベルの音が聞こえ、
ドアから三十代程の男性が入ってきた。
(…意外と気楽にできるかも…)
そう思った私は、
頑張ろう!とやる気をためた。
実「あ、沙織ちゃ~ん。」
沙「!、はい…?」
突然名前を呼ばれ、
後ろを振り返る。
すると、実咲が
にっこりと笑顔で手を振っていた。
…騙されてはいけない。
そういうことにはなれているから。
私は注意深く考えることができた。
沙「なんでしょう?」
実「えっとねぇ?私が
カウンターやるから、
ちょっとキッチンの方お願い?」
沙「え?でも私まだやったばかり…」
実「先輩がお願いしてるんだよ?」
沙「!!っ」
言いかけていた言葉が
ごくっと喉の奥に押し込まれる。
実咲の顔が笑顔が消えたのだ。
鋭い瞳は
私の心臓をまるで見通しているように
貫いてくる。
少しも呼吸ができない中で、
私は「はい…」と声を出すしか出来なかった。
実咲は、
怪しい笑みを浮かべる。
実「じゃあお願いね♪」
私は実咲に
背中を押され、
キッチンの方へと走っていった。