第17章 信じてるから笑うんだ
沙「…?」
私は、恐る恐る目を開けた。
何か、とてつもない音が響いたからだ。
どう表現すればいいのかはわからない。
でも、目の前の刈真が無事なことを
確かめられただけで、
私はそっと、安堵の表情を表した。
私は、この止まったような空間の中で
もの凄い音を生み出した訳を確かめようと
そっと、栞鳳の方へ目をやった。
その瞬間 私は目を疑う。
黒い狼のような髪を漂わせ、
黒のアングラネックウォーマー。
耳には黄金色に光るピアスをし、
メンズコートの裾周りは
ふわっと宙を舞っている…
刃物を握る栞鳳の腕を、
グッと捕まえている『あの人』が見えたからだ。
沙「――――っ!?」
刈「…誰…だ?」
刈真は、私の前で唖然とする。
他の皆もそうだ。
誰も予想していなかったもの。
『あの人』は
栞鳳の腕をグッと引っ張った。
栞鳳は痛そうに顔を歪めた。
きっと、恐ろしい力なんだ。
『あの人』だもの…。
栞「なぁんだよ。おい…放せっっ!!」
栞鳳は力ずくでその手を振りほどこうとする。
だが、『あの人』は全く動かなかった。