第17章 信じてるから笑うんだ
彼が 一筋の涙を
流して泣いていたのだ。
私は 悲しかった感情が引っ込み、
驚きの感情が表に出てくる。
栞鳳は、小さく嗚咽をしながら、
私を見つめていた。
沙「…栞鳳君…。」
栞「…っ…。」
その時、何処からか大きな音が聞こえた。
私と栞鳳は
その大きな音に体を震わす。
やがて、複数の足音が近づいてきた。
栞「…来た…。」
栞鳳は、涙を流しながら
口角をニヤリとつり上げる。
その直後、
目の前の黒い幕が
ビリッと破られ、 あの人が入ってきた。
刈「沙織っ!!大丈夫っ!!?」
沙「刈真君…っ!刈真君っっ!!!!!」
私は、すぐさま栞鳳から
身を引き、刈真に抱きつく。
刈真は 少しオロオロしながらも
ギュっと私を抱きしてくれた。
暖かく大きな手のひらが
私の冷たかった体を癒してくれる。
その途端、今までの恐怖も勇気も
全部が溶けて、涙になった。
沙「っ…怖かったよぉっっ!!…」
刈「…っごめんね…怖かったねっ…ごめんね…」
刈真は、私の頭を優しく撫でてくれた。
その後、翠や優一など、
見慣れた顔の皆がゾロゾロと入ってきた。