第17章 信じてるから笑うんだ
目の前にいる栞鳳は
その不気味な笑みをすっと、
酔ったように赤い、
忘我の表情を顔に浮かべる。
私は 頭が真っ白になったまま、
立ち上がる。
足の痛みなんて 気にもならなかった。
フラフラと、栞鳳に近づいていく。
栞「どうしたの?沙織ちゃん。」
頬をほんのり赤く染め
うっとりとした表情の彼は私を呼び止めた。
次の瞬間――――
私は、ふわっと兎のように跳び、
遠い間から栞鳳に左足の蹴りを放つ。
だが 栞鳳は察していたように
ひゅるりと笑顔のままかわしてしまう。
まあ これも予想の内だ。
その後、瞬間的に私は体制を立て直し
一秒も間もないまま腹部に蹴りを入れる。
栞「っ!!?」
沙「…っ」
この目にも止まらない速さで
繰り出された攻撃には 流石の栞鳳も
頭が回らず、見事に私の膝が入る。
膝が栞鳳の腹にめり込む度に呻く。
私はそれでも構わず、
精一杯の力で最後までやりきった。
沙「…っ…。」
泣きながら、最後まで。