第15章 夏祭り
翠「あ、沙織ィ~!!」
美「沙織。おかえり。」
大「おお、二人共っ!!」
遠くで、翠が笑いながら
手を振っているのが目に入った。
私もお返しにと手を振る。
翠の隣には、
眠そうに目を擦りながら
アイスを食べる優一がいた。
その隣には、
美紀と大河が佇んでいる。
その隣にも、二人の子供を抱えた
琴音が、優しく微笑んでいた。
翠は優一に「ほら、アイスたれちゃうから!」と
ウエットティッシュを手渡す。
優一は少しだけお辞儀をすると、
ささっと浴衣についてしまっていた
アイスを拭いた。
翠「?あれ、沙織なんか顔赤いよ?」
ギクッ
私は一瞬肩が震えた。
美「あら、熱でもあるの?」
琴「今日は暑いからね!」
翠はそんな私の態度と顔を見つめ、
何かに気づいたように口角を二ヤっとさせた。
翠「あ~、そーゆぅーことねぇー。」
沙「!!!」
私は顔がみるみるうちに赤くなっていく。
他の皆は頭にハテナマークを浮かべているが
翠は明らかに先程私達の間にあった出来事を
わかってしまっただった。
刈「今日は、最高の思い出です。」
隣で、彼が涼しい笑顔を見せる。
翠も私も、目を丸くして驚いていた。
翠「どうしたの!?刈真君!いつもならっ
『人のことを探るようなことって
人間がやるもんじゃないですよね( ̄∀ ̄)』
みたいなこと絶対いうのに!!」
大「お前どうしたんだ!?
どっか頭打ったのかっっ!!?」
(バリバリ酷いこと言ってるよ…!)
私は密かに冷や汗をかく。
刈真は広い夜の夏空を眺めていた。
刈「だって、皆さんだってそうでしょう?」
翠「まあ、そうだね…。凄く、楽しかった。」
優「美味しいものも沢山食えたしな…」
琴「弓弦達も、疲れきって寝ちゃってるしね。」
美「忘れられない日になったよ。」
大「ああ…ぜってー忘れたくないな。」
全員が揃って、
広い広い夜の夏空を見上げる。
何処かから風が無邪気に吹き渡り、
明るく輝く一等星は、私達に手を振っているようだ。
沙「いつか、この思い出は少しずつ削れてしまう。
けれど、それはやがて美しい風に乗って
また、新たな季節を運んできてくれる。」