第15章 夏祭り
刈「!!」
沙「!! 花火が上がったっ!!!!」
ふたりの目の前で、
大きく、鮮やかな花火が打ち上げられる。
赤っぽい色の花を咲かせる菊先(キクサキ)
紅色の花弁を咲かせる牡丹(ボタン)
ハートやニコちゃんマークなど
色々な模様のリングを咲かせる型物の花火まで、
とにかく色々な花火が打ち上げられた。
私はその絶景にひたすらうっとりする。
隣を向くと、刈真も優しい瞳で
花火を見物していた。
花火が上がっている間、
まるで時間が止まったかのように感じる。
隣を見れば 必ず彼が。
気が付けば、そっと
ふたりは手を繋ぎ合っていた。
花火は
止むことなく打ち上がる。
沙「…綺麗…だね。」
刈「うん。」
刈「僕はね。」
沙「!!っ」
刈「君に逢えて良かった。」
オレンジや赤色に染まっていく彼の顔は
実に柔らかく、美しく微笑んでいた。
沙「大好き。」
刈「僕も。」
大好きで
落ち着いた彼の顔が
もうすぐ側にまで寄ってきていて。
気づいた時には
唇と唇が優しく重なり合っていた。
親密でいて穏やかで
きっと、何かのかたちを
無意識に残しておきたかったのだろうか
でも、そんなものはどうでもいい
只々、温かくて
幸せな香りを運んでくるその唇は
花火なんて気にもとめずに
そっと、いつまでも触れ合っていた。