第3章 普通の子
教室にいたのは刈真だった。
私は安心して教室に入る。すると、
彼もこちらに気づいたのか
私の方へ目線をうごかした。
自分の席は窓側の1番後ろ。
世にいうベストポジションだろうか?
机にカバンをおろすと、
刈真が笑いながら、
「この教室は朝も昼も綺麗だね。」
と言った。
「…そう…だね。」
私は観察台の上に置かれているマーガレットの花を
みながらこたえた。
刈真が座っているのは私の右斜め前の席。
机にひじをかけ、顎に手をあてて堂々としている。
その姿すらまるでモデルだ。
窓から見える空を2人で眺めているだけの時間。
なにもしないが、そんな時間が
私にはとても幸せな時間だった。
だが、そんな時間もつかのま。
次に来るだれかの足音が聞こえ、
「もう行かなきゃ」と刈真が席を立つ。
同時に後ろのドアから女子生徒が姿を現した。
女子高生は私達を見てはっとし、
すぐに嶋瀬くんの方に視線をそらす。