第14章 刈真の過去
「これで、物語は幕を閉じた…」
私は、ひんやりとする胸を抑えた。
水よりも淡い心の侘しさが、
夕立のように胸に広がっていく。
「…! 沙織っ泣いてる…。」
「えっ?」
翠の言葉に驚き、
そっと頬を撫でてみる。すると、
少し冷たい涙が指に付いてきた。
「あ…」
その指を見て、
私はさらに涙を流す。
刈真がこんな過去を味わっていたなんて
全く知らなかった。
彼はいつも私を助けてくれて、
まるで雲の上の人のような存在だった。
すぐ側にいるのに、
手を伸ばしても届かない。
そんな存在だった彼は、
過酷な人生を積んでいたからこそ
私をあそこまで救ってくれたのだ。
どうして、私は気づけなかったのだろう。
こんなハズじゃなかったのに。
涙が止まらない。
「…もう、帰りましょうか。」
雫が、静かに囁いた。