第14章 刈真の過去
「…ママはね?…もう 帰ってこないの。」
雫は、重たい口を開いて
精一杯の声をだす。
それを聞いた刈真は
悲しい表情をして顔を伏せてしまった。
「…僕が…悪い子だから…」
「っ!違うっ刈真は悪い子じゃないよ」
「じゃあママ…なんで…帰らないの…?」
「…っ」
雫は、刈真に見つめられ、口をごもらせる。
今の彼にこの意味をいっても、理解できないだろう。
返事に困り、雫はずっと黙っていた。
すると、刈真は急に厳しい顔になった。
「…?刈真?」
「僕…いい子なるから。」
「え…?」
突然の言葉に雫は戸惑う。
「なるから…。」
刈真の瞳を覗くと、
その奥には何かの闘志が燃えていた。
雫は父親に声なき助けを呼ぶ。
だが、父親は何も言わず、
ずっと刈真の顔を見つめているままだった。