第14章 刈真の過去
雫は、私の目を見る。
その瞳の奥には、
熱く語ってくる何かの炎が灯っていた。
私の心は揺らぐ。
その炎が、
「聞くな」
といっているように見えたからだ。
だけど、私は彼を知りたいのだ。
その思いは、ほかの誰にも譲れない。
強い意志をぐっと固め、
その炎よりも熱く輝く眼差しで瞳を見つめた。
すると、さっきまで
こわばっていた雫の表情が少しだけ緩まる。
雫「あなたなら、大丈夫だね。」
沙「え?」
私の言葉に耳を傾けたあと、
雫はそっと溜息をついた。
それは、
これから話す″刈真の物語″の
始まりを知らせる合図のようなものだった。
私と翠は雫の近くへ椅子を動かす。
そして、ゆっくり深呼吸をした。
雫「これは 一人の男の子のお話。」
物語の幕は、
何も聞こえない世界の中であがった。