第13章 転校生の夢
彼女は静かに泣いていたのだ。
やがて顔を手で覆い隠す。すると、
その手のなかから小さな泣き声が聞こえてきた。
琴「私…嬉しいのっ…」
琴音は涙声で話し始める。
琴「今まで…自分の作品を読んでくれる人なんて
一人もいなかった…。しかも…っ
あんなに嬉しい感想をもらえるなんて…っ」
「…。」
私達は、琴音の涙をそっと見つめ続ける。
琴「ありがとう…っありがとう…。」
翠「泣かないで?琴音ちゃん。」
沙「そうですよ。すっごい面白かったです!!」
私達は彼女に近づき、そっと背中を撫でる。
刈真は、穏やかに微笑んでいた。
刈「やりたいことを貫き通すって、
結構大変なことなんですよね。僕には分からない。
結果を出すために、夢にむかって
人知れず努力しなきゃならないんですから。
夢があったらあったで、苦しいですよね。」
翠「…。小説を書くのって、
結構大変なんでしょう?」
沙「まぁ、文章でしか表せないですからね。」
翠「しかも学校に行きながらだし。」
刈「はい。正直見直しました。」
沙「琴音さん。」
琴「…?」
琴音はそっと顔を上げて私を見る。
私は、フワっと笑顔になった。
「夢、叶えるように頑張ってくださいね。
私達は、ずっと応援します。」
琴「…っ うん…っ!」
私と琴音は、一緒に笑い合っていた。
翠「琴音ちゃんは偉いなぁ…」
刈「…そうですね。」
翠「よし。そうか。」
刈「?」
翠はノートを取り出し、
何やらペンで書き始めた。刈真はそれをそっと覗く。
『あるひ、おんなの子が買い物にいきました。』
刈「いや、翠さんは間違ってます。」
翠「!!!」
どうやら、翠に小説家は向いていないらしい…(^_^;)