第12章 孤独は無限
玄関を出ると、彼女は西校舎の方へ行く。
別に外を出るわけではないのか…
私は安心して琴音の後を追った。
校舎の曲がり角を曲がったところで、
私は一瞬焦った。
琴音が曲がって
すぐ側にある花壇の前にしゃがんでいたからだ。
私は体制を立て直し、
丁度琴音からは見えない位置に隠れる。
そして、そ~っと彼女を見つめた。
琴音は、花壇に
咲いているマーガレットの花を触っていた。
それも、赤ちゃんを扱うようにとても優しく。
(花が好きなのかな…)
私は琴音の行動を、曖昧にノートにメモした。
ノートに書き終わり、また琴音を観察する。
すると、今度はその花を触りながら笑っていた。
横顔しか見えないが、とても幸せそうな顔だ。
やがて、何か歌が聴こえてきた。
とても綺麗な声だ。
♫ 瞼の裏にうつるのは
あの頃の素敵な音
その優しさに包まれた
花束を今 君に送ろう ♫
私はその歌に聞き惚れていた。
何かのラブソングだろうか。
とても、落ち着くリズムで聞きやすい。
(なんだ、とてもいい人じゃない)
きっと知らない人達
ばかりだから緊張してあんなことを言ってしまったんだ。
大丈夫。あのクラスは皆優しいよ。
私は、彼女の背中を見つめながら
心のなかでそう呟いた。