第11章 初めてのお出かけ
優一が身をのりだして耳を傾ける。
翠は、少しためらっていたが、
ゆっくりと口を動かした。
「あんたらは…
犯罪者だって。」
優「…。」
翠はか細い声でそう言った。
何秒か、ふたりの間に重苦しい空気が流れる。
だが、どちらも口を開こうとはしなかった。
翠「・・・だからね。」
優「っ!」
翠は静かに笑いながら優一の方に顔を向ける。
翠「だからあの子には刈真君が必要なの。」
優「ふ~ん。」
優一は翠にそっけない言葉をかえし、
隣に置いておいた黒の肩掛けかばんを
背負った。
そして溜息をしながら立ち上がる。
優「もうストーカーは終わりだ…。
俺…疲れた。付き合った代わりに
映画でも見に行こうぜ…」
翠「あんたも気まぐれだね。うん。
あの二人なら大丈夫か。行こう行こう!」
そのまま二人はにこやかな笑みを浮かべて、
お店のドアに手をまわした。