第9章 文化祭
「もう大丈夫だよ。」
沙「え…?」
私はその声に気づき目を開けた。
優しい透き通るようなこの声。これは…
顔をあげると、そこには
優しく微笑む刈真の姿があった。
沙「どっ、どうして!!?」
刈「後ろから悲鳴が沢山聞こえたから、
黒翔さん、無理してるんじゃと思ってね。」
沙「も…もしかして待っててくれたの!?」
刈真はゆっくりと頷いた。
沙「うっ、ううぅ…!!」
私はその場に座り込んだ。
とたんに涙が溢れてくる。だが、
これは恐怖で出た涙ではなく、安心してでた涙だ。
その涙を見せまいと、袖で拭っていると
刈真もしゃがみこみ、そっと、私の頭に手をのせる。
刈「無理しなくていいんだよ。」
その優しい声に、また涙が止まらなくなってしまう。
刈「そろそろ次のお客さんもくる。
行こうか。 沙織。」
沙「…うんっ!!」
私は彼に手を引かれて歩き出した。
その時、私の彼への感情に
また新しいものが産まれていた。
彼の後ろ姿をみながら、そっと考えた。
私は 嶋瀬君が
好きなんだ。