第1章 どうしてこうなった
「眞季」
後ろから清十郎さんに呼ばれ振り向く。
清十郎さんの手には一枚の濃い紫色をした布が握られていた。
そして、その布を私に手渡してきた。
…?え、何この布?
用途の分からない布に首を傾げる。
「これ使って、悠真の腕固定してやれ。おい清正、今日は源のやつ来てたよな?」
「おう、来てると思うぞ。眞季、面倒くせぇと思うが、悠真に付き添って行ってやってくれないか。片腕じゃあ何かあった時危険だからな」
「あ、う、うん。分かった」
悠真くんの腕を布で吊るしながら、二人の方を振り向いて頷いた。
当の悠真くんは、先程の威勢は何処へやら、清正さんの言葉にも逆らわず只々黙りこくっていた。
そんなに腕痛いのかな…。
早くその…げんさん?っていう人の所に連れて行かなきゃ。
肩の上で布の先端を固結びし、悠真くんに手を差し伸べる。
「行こう?」
「……」
しかし悠真くんは相変わらずの不機嫌顔で、私の手を無視してスタスタと歩いて行ってしまった。
……我慢しろ私。私のせいで悠真くんは腕痛めたんだから…!!
自分自身にそう言い聞かせ、悠真くんの後を追って廊下に出た。