第9章 衝突2
加納は、うっすらと涙を浮かべたまま先生達の方に向き直り尋ねた。
「先生方、今日はこれで失礼してもいいですか?皆、疲れてるみたいですし、後日改めて話を聞いて欲しいのですが…」
うるうると目を潤ませながら、加納は主任の目を見る。
「そうね…暗くなると危ないですから今日はこのくらいにしましょう。」
気づけばもう放課後だ。
あれからずっと説教を聴いていたので、皆、思い思いに体をほぐす。
それから、主任は他の先生に呼ばれて先に退席し、それに倣うように次々と室内から出た。
「…ったくあのババア…」
「白河君、口調悪いわよ?」
美月が横目で軽く注意するとすかさず
「災難だったね。白河君」
と加納は爽やかな笑みを浮かべて言った。
「…ああ…でも俺よりも…」
白河が、夢の方を見ながら言葉を続けようとすると、すぐ様加納は思い付いた様にそれに合意した。
「そうだったね!春川さんの方が大変だったよね?怖かったよね?ごめんね!私の友達が!」
「…え…えっと…」
急にまくし立てるように一気に言われたので、夢はたじろいた。
「加納さん。夢ちゃんが驚いちゃうから」
と夢を庇うように加納との間に入ったのは、美月だった。
(美月先輩…!)
美月のその行動に夢がプチ感動してるとはぁっとため息が聞こえた。
「俺、先に帰るから」
と白河はさっさと行ってしまった。
その後ろ姿に加納は笑顔で「またね!」と声をかけた。
白河の姿が見えなくなると
「じゃあ、私達も先に帰るね!」
と美月に向かって手を降りながら、加納は立ち去る。
その後ろを、二人の女子生徒は黙って着いていった。